投資商品のうちの一つに、外貨MMFという投資信託商品があります。この外貨MMFは、SBI証券などで積立投資ができるうえ、取引手数料が無料である点から、投資初心者には始めやすい投資商品の一つであります。
また、外貨建て(日本以外のお金)で購入することになるので、ご自身の分散投資の一つとして非常に使いやすい投資商品でもあります。
そんな外貨MMFに関しては、別な記事で詳しく解説していますので、以下に記事リンクを張り付けておきますので参考にしてくださいね。
さて、この外貨MMFの特徴を調べていると、やけに高い金利の商品が目につくと思います。金利とは、その商品を持ち続けることで投資金額に対してもらえる手数料みたいなものですね。例えば、100万円貸すので、返してもらうまでに毎年1万円支払いを受ける、といった考え方です。
この高い金利を支払ってくれる外貨MMFには、次の2つ挙げられます。
・南アフリカランド
なぜこの2つが目に付いてしまうのでしょうか。その理由はなんと言ってもその金利の高さが投資家にとって注目も的だからです。
なんとトルコリラの金利は年利約18%。そして南アフリカランドは約6%と、銀行にお金を預けていても増えることはほぼないこの時代において、なかなか魅力的な数字に見えますよね。(2018年9月27日現在の情報)
しかし、そんな高金利商品ではありますが、正直なところ投資商品としてどこまで安全なのでしょうか?多くのブログやサイト、証券会社などでおすすめ通貨として取り上げられていますが、しっかりとリスクについて語られている所は少ない印象です。
そこで今回の記事では、外貨MMFでトルコリラと南アフリカランドを投資対象にしようか悩んでいる投資家に向けて、果たして投資商品として安心安全な商品なのかを調べてみようと思います。
目次
外貨MMFは金利だけを見てはいけないその理由とは
外貨MMFは手数料が無料であり、海外通貨で運用する外貨建て商品でもあります。そのため、リスク分散をしながらの積立投資に、相性が非常にいい商品であります。そのうえ、選ぶ通貨によっては、高い金利も手に入ることから、多くの投資家がこの商品を購入してきました。
大手証券会社であるSBI証券、楽天証券、マネックス証券などで手軽に購入できることから、身近な投資商品としての地位が確立されつつあります。
しかし外貨MMFに投資をするとき、金利の高さや手軽に投資ができる商品、というだけに注目して投資をしてはいけません。そもそもとしてこの外貨MMFとは、為替差損が出る商品なのです。
為替差損とはどういうことなのか、具体的に見ていきましょう。
外貨MMFの為替差損リスクとは
外貨MMFに投資をする際、通貨価値の変動により損をする可能性があることを覚えておく必要があります。それをこれからご説明しましょう。
例えば、日本円に対して米ドルは、毎日、毎分、毎秒ごとに交換価値が変わっています。昨日は1ドル100円だったものが、今日は1ドル95円。そして明日は1ドル90円になる可能性があります。
1ドルを日本円で100円で買っていたものを、1ドル95円の時に円に換えてしまったら、5円分損をしてしまいます。この通貨の価値が変動したことによって損をしたことを、投資用語で為替差損と言います。
いくら金利が高くても、いくら売買手数料が無料だったとしても、この為替差損により実質的な利益が無くなってしまうことがあるのです。そのうえでこの為替差損が、高金利通貨であるトルコリラや南アフリカランドでも起きているのです。
果たして高金利通貨だからと言って、投資するべきかどうか考えなければいけませんよね。おすすめ通貨として良いのかどうか、調べてみる必要があります。そこで実際に、高金利通貨の代名詞ともいえる、トルコリラ円の現在のレートを見てみましょう。
トルコリラ円週足チャートを見てわかった驚きの事実とは
まずはトルコリラ円の1年間の価格の推移を、チャートを見ながら考えてみましょう。
トルコリラ円の1年間の推移を見てみた
★ トルコリラ円週足チャート 2018年9月25日現在
※ヤフーファイナンスより転載
チャートとは、ローソク足と呼ばれる価格の動きを表した棒グラフが、時系列に並んでいる表のことを言います。
このチャートを見ると、トルコリラは円に対して安くなってきているのがわかります。つまり「円高トルコリラ安」という状況です。
このチャートは約1年間のデータになりますが、仮に1年前の2017年10月ごろからトルコリラを持っていたとしましょう。その時の対円レートは32円程度です。そこから2018年9月25日の時点ではなんと約18.5円。約13.5円値下がっているのがわかりますね。
とすると、ひと月前はトルコリラを320万円分を持っていたとした場合、今は185万円に値下がりをしていることになります。
差し引くと、135万円もの値下がりです。車が1台余裕で買えてしまいますね…
さて、この間のトルコリラ円の値下がり率を調べてみると、約42%の下落です。異常なほど下落しているのがわかります。ここで一度思い出してみてください。このトルコリラ円の金利は、18%だという点です。
仮にトルコリラを保有していることで受けられる金利を計算したとしても、圧倒的にマイナスになります。この下落を続けるトルコリラ円の現状を見ていると、投資対象として適格かどうかは難しく感じますよね。
さて、続いて5年分のチャートも見てみます。
トルコリラ円の5年間の推移を見てみた
★ トルコリラ円 週足チャート(5年分
※ヤフーファイナンスより転載
2013年12月頃は、トルコリラ円の価格は大体50円ぐらいでした。しかし今現在は18.5円であります。もう計算したくもないですが、減少率を調べてみましょう…
電卓を叩いたら、ざっと5年で63%減ぐらいです。すさまじい下落ですね。こんな下落を見せられたら、トルコリラ円を投資対象にするには恐怖しかありません。
さてここまで書いたうえで、トルコリラ円に投資するのは、非常に危険なのではないか…と感じてしまいます。確かにこれだけ見たら、投資商品としてのおすすめ通貨どころか、赤信号並みにシグナルが点灯しているように思います。
しかしそのうえで、今僕はふと思ったことがあるのです。
ドルコスト平均法戦略を生かせないか?
タイトルの通りなのですが、今現在18.5円という、チャート上では非常に低い位置にまで来ています。ましてや、つい最近急激に下げたばかりです。
この状態を見ると、明らかに投資不適格に見えるのですが、はっきりとダメ!とも言えないのではないかと感じるのです。
なぜなら、チャート上の動きに気になるポイントがあるからです。それは何かというと、2018年8月のローソク足で、大陰線(大きく下げたローソク足)の後、もみだしている点です。
確かに歴史的に見れば下げ続けているのは間違いないのですが、ここまで短期間で大きく下げたことは今まであまりありませんでした。(10年ぐらい見ればないことはないですが)
そのうえで、下限は限られています。国が滅びないことを前提に考えれば、0円まではせいぜい18.5円しかないと考えることもできます。これが現在30円だったとしたら、下限まで30円もある訳ですので、これが18.5円しかないと比べるとまだまだ落ちる余力があると考えられますよね。
そしてこういう時にこそ、ドルコスト平均法を利用して積立することで、リスクを減らしつつも外貨建て商品でもある外貨MMFの高い金利を享受できるのではないか…と思うのです。
そのドルコスト平均法について詳しい内容は、別記事で書いております。下にリンクを張っておきますので、気になる方はぜひご覧くださいね。
ドルコスト平均法を使ってトルコリラ円MMFをシミュレートしてみた
ここで実際にドルコスト平均法を使って、トルコリラ円MMFをシミュレートしてみることにしました。
そこで当ブログ独自の買付のルールとして、以下に設定することにしました。あくまで独自のルール設定ですので、その点はご了承くださいね。
① 毎月日本円で1000円ずつ買い付ける
② SBI証券の参考レートをベースに買い付け量を計算
③ このままトルコリラ円が毎月1円ずつ下落するとする
④ 参考レートは現行レートに対して1.5円手数料が乗る
⑤ 12か月連続で買い続ける。
この条件を基に折角なので表にしてみました。
取引レート | 購入トルコリラ | 合計トルコリラ | 日本円換算 | 投入金額 | |
1か月目 | 20.00 | 50 | 50 | 1000 | 1000 |
2か月目 | 19.00 | 52.63 | 102.63 | 1949.97 | 2000 |
3か月目 | 18.00 | 55.55 | 158.18 | 2847.24 | 3000 |
4か月目 | 17.00 | 58.82 | 217 | 3689 | 4000 |
5か月目 | 16.00 | 62.50 | 279.50 | 4472 | 5000 |
6か月目 | 15.00 | 66.66 | 346.16 | 5192.4 | 6000 |
7か月目 | 14.00 | 71.42 | 417.58 | 5846.12 | 7000 |
8か月目 | 13.00 | 76.92 | 494.50 | 6428.5 | 8000 |
9か月目 | 12.00 | 83.33 | 577.83 | 6933.96 | 9000 |
10か月目 | 11.00 | 90.90 | 668.73 | 7356.03 | 10000 |
11か月目 | 10.00 | 100 | 768.73 | 7687.3 | 11000 |
12か月目 | 9.00 | 111.11 | 879.84 | 7918.56 | 12000 |
ざっと計算してみましたが、もし仮にこの条件で買い続けたとしたら、投入金額12000円に対して円換算の価値が7918.56円という結果が出ました。その差は4000円程度。約33%のマイナスということですね。
しかしこれが、20円の時に12000円分を購入したとしたら、9円になった時点で5400円分の価値にしかなりません。50%以上の価値の下落ですね。これではリスクが高すぎます。
このシミュレート通りに下落するとは限りませんし、ドルコスト平均法を使って買い付けているので、急激に下落をしたとしてもその分多く買い付けることができますから、後々有利になる可能性が高くなります。
また、この外貨MMF自体も数ある投資商品の一つであり、資産分散のひと商品でしかないという前提の下、投資をすることになります。外貨MMFだけで稼ごうとしないからこそ、資産の分散に繋がるのではないでしょうか。
そのうえで高金利を享受できる可能性があります。確かに現状下落し続けている状況でありますが、当ブログとしては、あえてリスク商品と知ったうえで、分散投資のネタに使ってみても面白いのではないかと考えています。ただし、投資は自己責任ですからご注意くださいね。
南アフリカランド円を見てみよう
さて続いて、証券会社がおすすめ通貨として押している投資商品の一つ、南アフリカランド円の日足チャートも見てみましょう。
★ 南アフリカランド円の日足チャート(1年間
※楽天証券より転載
今回の南アフリカランド円チャートは、2017年10月頃から、2018年9月末ぐらいまでの1年間のチャートになります。
さてこのチャートによれば、1年前は大体8.4円になり、チャート上での最新のレートによれば8.0円となっております。その間に9.2円~7.2円程度までのブレがありました。
それではもっと長い期間も見てみましょう。
★ 南アフリカランド円 週足チャート(5年間
※楽天証券より転載
こちらは2013年10月頃ぐらいから、2018年9月末までのチャートになります。これによれば5年前のスタート時のレートはだいたい10円です。その後6.5円まで落ちたあとに、今の約8円ぐらいで落ち着いています。
南アフリカランド円の今現在のチャートの動きを見れば、下落トレンドの最中なのかと考えられそうです。しかしトルコリラ円と比べると随分と落ち着いた動きであるということも言えます。もちろん多少なりとも上下はしているものの、トルコリラ円以上に下限に限界があります。
分散投資の考え方から、トルコリラ円と同じようにドルコスト平均法を駆使し、一定金額を積立投資をしていけば面白いかもしれませんね。SBI証券や楽天証券などでは、円から外貨に交換しなくても購入できるうえ、自動的に積立も出来ますから、楽チンでもあります。
▷ 外貨MMFをどう使っていくかを考えてみる
さて、高リスク外貨MMFと言われる、トルコリラ円と南アフリカランド円の現在の状況を見てみました。
こうしてみてみると、5年前の比べると円に対してそれぞれの通貨が安くなっています。そのため、いくら金利は良くても為替差損でやられてしまう可能性がありますね。
しかし文中でも触れた通り、ドルコスト平均法を使えば、うまくリスクを分散し立ち回れるかもしれません。それができれば、案外面白い投資商品に変わりそうですね。
あくまで面白いというだけで、絶対に安心安全という訳ではありません。投資は自己責任でお願いします。そのうえで少額で遊んでみるのも一つの手です。
▷ おわりに
いかがでしたか?外貨MMFは外貨建て商品ということもあり、とっつきにくい印象がありますが、当ブログでは以前は危険だと思っていたトルコリラ円や、南アフリカランド円は、やり方次第で大化けする可能性があります。
そうは言っても当然リスク商品であることは違いありませんし、文中に触れている国が無くなるというリスクも多少なりともあるわけです。ですから、金利の高さに誘惑され、すべての資金を投資するのには非常に危険だということははっきりと申し上げておきたいです。
当ブログとしては、投資をするのにおすすめ通貨ですよ!とは言い切れませんが、外貨建て投資商品である外貨MMFの特性をうまく利用し、分散投資商品のひとつにしてみるのも良いのではないでしょうか。
※トルコリラ円と南アフリカランド円の外貨MMFの両方が購入できる証券会社は、SBI証券、楽天証券、カブドットコム証券のみ(ネット調べ
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