人って生まれた瞬間は、何にも知らない、何にも身に付けていない、まるで見た目は一面砂漠のような、せいぜい大量の砂がある状態ですよね。
その状態から、様々な経験、勉強をして、今の自分が作られているもんです。
ということは、今の自分の環境、友人知人関係、金銭関係、ほか様々な結果は、『今まで自分がそういった選択をしてきた結果』という言い方もできます。
例えば貧乏だったら、貧乏になるように選択してきた結果といえますし、僕のように友人がいない人は、いなくなるように選択してきた結果です(涙
ではなぜ、今までそういう選択をしてしまったのでしょうか…これには、人間の悲しい行動心理が影響をしているかもしれません。
そこで今回の記事では、僕たちはどんな行動心理に基づいて選択しているのかについて、ちょろっと考えてみたいなと思います。
目次
A男はなぜ通勤時間が2時間もかかるB社に就職したのか
例えば、A男という男がいたとします。
A男は、今自分が住んでいる場所から、通勤時間が2時間もかかるようなB社に就職しました。
就職を決める際、勤務場所、おおよその賃金、求められている技能等々は、あらかじめある程度はわかります。
その条件を見た結果、なんとなく良さそうだったので、勤務したら通勤時間が長くなるかもしれないけれどそのB社を選択します。
さて、そこからもう少し過去のA男に戻りましょう。
A男が大学で学んでいたのは、マーケティング関連でした。
マーケティングとは、どうやって商品を売るかとか、どういう売り方をすれば人は買ってくれるかなどの販売戦略って所です。
なんでそんな知識を教える学校に入ったかというと、別にマーケティングを学びたいから…という訳ではなく、まだ働きたくないのと、ただ単に実家から近かったから…という理由でした。
その中で、なんとなくマーケティングを覚えて置いたらいいかなぁ…というぼんやりとした選択をした結果、学んでいたということになります。
就職活動をする際に、特にやりたいことはなかったけれど、マーケティングを勉強したんだから、そっち関係に会社に就職するか~となんともなしに考えることは、良くある話です。
ただ、できれば給料は高くて、実家から出たくないから通えそうなところで探します。
すると、給料はそこそこいいけれど、ちょっと距離が遠く、通勤時間がかかるB社から内定をもらいました。
A男は、給料がいいんなら、多少は我慢すれば実家から通えるから、という選択をして、そのB社に入社することに決めます。
さて、これを時系列でまとめてみると次のような選択をしていった結果、今のB社に就職したわけです。
① まだ働きたくないから、実家近くの大学に通うことにした
② 学校ではなんとなくマーケティングを覚えることにした
③ 就職活動で、折角だから学んだマーケティングを生かせる会社を探した
④ 距離は遠いけど、B社が都合が良さそうだからB社に決めた
ものすごくざっくりと①~④の流れにまとめさせてもらいましたけど、ここから考えられるのは、この中のどれかを、違うものに選択していたらどうなっていたかとう点です。
例えば③の就職活動の際にじっくり考え、自分が学んでいたマーケティングを生かす会社ではなく、実は昔から好きだった、宇宙開発関連の会社に入ろうかと考えた場合はどうでしょう。
④には、もしかすると種子島宇宙センターで働くことになった…という選択をしていたかもしれませんよね。
つまりこれらの一連の流れで何が言いたいかというと、その時々の選択の仕方によって、そこから自分の未来は分岐していくということです。
そして最も大事なことは、今どういう選択をすることが、本当に自分が望んでいる未来に繋がっているのかを、真剣に考えておく必要がある、ということなんです。
ところが、そうは言っても上に書いた通り、なんとなくとか、大して考えずに選んでいるのが現実です。
ではなぜそんな選び方をしてしまうのでしょうか。
実はこの選択の仕方には、人間の行動心理に隠されているようです。
人間の思考は全て、ファスト&スローにより選択されている!?
ノーベル経済学受賞者のダニエル・カーネマンが著者、ファスト&スローによれば、人間の思考は2つに分類されると言います。
ひとつは、システム1の通称ファスト思考、もうひとつはシステム2の通称スロー思考です。
簡単に言えば、何も考えずになんとなく決めるファスト思考と、熟考の末に決めるスロー思考に分かれているといいます。
ダニエル・カーネマンによれば、人間は毎回毎回深く考えてしまっては、限られた時間の中では不利だといいます。
特に狩猟時代の人々は、いつなん時他部族や獣などに襲われるかわかりませんから、ほとんど即座に反応できるような状態にしておかなければなりません。
つまり、何かあったら考える時間をすっ飛ばし、この反応をする…という身体の動きが必要だということです。
その結果として、過去の経験や知識などを自動的にひっぱりだし、そして自動的に判断、行動するようになったそうです。
ですが、人は新しい出来事などに触れたとしたら、ものすごく悩みますよね。
なにしろ、今まで経験したことがない様な、ファスト思考では対応できないようなものですからね。
そこで登場するのが、じっくりと物事を考えるスロー思考というわけです。
ファスト思考で生きてきた結果、今の選択をしているかも?
人間はそもそも楽をしたい、出来るだけ何も考えたくない生き物です。
それを踏まえたうえで、先ほどのA男の選択の仕方はどうだったでしょうか。
もしかすると、スロー思考によりしっかりと考えたのではなく、ファスト思考で直観的な、自動思考モードにより選択してしまった結果、今のながーい通勤時間になってしまった可能性があります。
そして実はこのファスト思考は、スロー思考とは違って、エラー満載だというのです。
つまり、間違った記憶を正しいと判断して、ファスト思考により自動的に反応してしまうことがよくあるというのです。
というのも、基本的に情報の一部を見てすぐに判断できるのがファスト思考の特徴ですが、その一部の情報を見たところで、必ずしも予測できるとは限らないというのです。
例えば、自分の目の前にしかめっつらの女性がいたとします。
それを見てファスト思考は、なんか怒っているなぁ…とすぐに判断しますよね?
ところが実はその女性、ただ単にお腹がすいて元気がないだけでした。
何にも考えず、ファスト思考で判断してみたら、全然答えが違った…ってことです。
これが、ファスト思考が抱える問題点で、心理学用語としてハロー効果と呼ばれています。
つまり、『しかめっつら⇒過去の記憶から怒っている状態の時の顔⇒だから今この女性は怒っていると感じる』という自動反応をしてしまっているということです。
AだったからBと即座に考えてしまったということです。
けれど、AだからBになるとは限りません。
A=色々ある、というのが、本来の正解なのです。
ファスト思考ではなく、スロー思考で選択することの大切さ
A男は自動的にマーケティングの会社を選んでしまいましたが、いま書いた通り、エラー満載のファスト思考により判断しました。
しかしもし、スロー思考で考えてられていたとしたら、自分がもともと好きだった宇宙開発関連の仕事に就くために、必要な知識を学べる学校に入っていたかもしれませんよね。
冒頭に書いた通り、何を選び、何を経験したかによって、今の自分が作り上げられていますし、これからの自分が作り上げられます。
ところが、その今まで選んできたものが、どういう思考の中で選ばれたのかによって、これからの人生が変わります。
ファスト思考だけで生きてきたとしたら、これからも目先の情報に反応してしまい、エラー満載なのにもかかわらず、選んでしまうことでしょう。
そうではなく、スロー思考で集中して考え、選択していくほうが、自分にとって正しい選択となるでしょう。
特に将来を決める上においては。
おわりに
このファスト&スロー思考は恐ろしいもので、僕も普通にやってしまっています。
ついつい、何かの物事を見たら、こうだと決めつけてしまうのがまさにそれですね。
ですから、一歩引いてみて、スロー思考で、物事を深く見てみることが大切だと、こうしてまとめてみて再確認しました。
そして僕たち人間は、何も考えず、直観的に選んでしまうことが非常に多いものです。
別に悪く言うつもりはないのですが、ファストフード店なんて何も考えずに食べる…という代名詞みたいなものですね。
もはや我々は、ファスト思考の奴隷になってしまっております。
そういった楽な選択をしすぎた結果が、今の時代なのかなーと感じています。
つまり、エラーだらけ、バグだらけのなかで生きているってことですね。
そう考えると、恐ろしい時代なんじゃないかとちょっと胃がキュッとしてきます。
ファスト思考ではなく、スロー思考で物事を判断し、じっくりと時間をかけてより正しい選択をしていきたいものです。
▼今回の記事で参考にした文献▼
ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか? 文庫 (上)(下)セット
――!今回の内容に関連した記事を3つご紹介!――
■人間のファスト思考について違った視点でみています
>『書籍』影響力の武器を読んで人間の行動心理を学ぶ① カチッ・サーの威力がやばい件
■人間は習慣の奴隷です
>【悪魔の力?】習慣の法則をどうにかしないと、あなたはいつまでたっても貧乏のまま
■選択の仕方にあらかじめルールを決めときゃいいんです
>『書籍』シンプルルールから学ぶ、単純だけど奥が深いルールの作り方